1章 はじめての東洋医学

はじめに
 当院にお見えになる患者さんのほとんどは、東洋医学治療を初めて経験する方たちです。私自身もともと薬剤師として新薬、漢方薬を含めて薬の世界に携わってきました。それが副作用で体調を崩してから、紹介されて東洋医学鍼灸治療を受け始めました。何回か治療を続けてゆくうちに、その効果と安全性を実感できるようになりました。ついには専門学校に入り直して免許を取得し、一鍼灸師として東洋医学ツボ療法の素晴らしさを広く世に伝えたいと願うようになりました。それ以来治療の傍ら、東洋医学・気の研究に一身を捧げ現在に至っております。私の拙い文で一人でも多くの方々に東洋医学治療の良さを知って頂き、一刻も早く健康を回復され幸せな人生を有意義に送って頂ければこれに勝る幸せはありません。

東洋医学は経験医学
 医学博士木下晴都先生の著書「鍼灸学原論」(医道の日本社)によれば、その歴史は4000年、一説によれば石器時代の石鍼治療を含めると実に5000年に及ぶとされています。このような長い治療の歴史は、その効果と安全性を実証していると考えます。本当に良いものは多くの人に支持されて長く続くからです。
 
 東洋医学の特徴は、幾多の治療経験の積み重ねが元となりやがてツボの発見につながったことです。今から約2000年前に黄帝内経「素問霊枢」として中国最古の体系的医学書が編纂されました。やがて「経絡説」「陰陽説」「五行説」「気血水説」などの古典に発展してゆき、その後幾多の盛衰を繰り返しながら今日の隆盛を極めるようになりました。

 日本ではそれまで痛いところに思わず手をあてがう「手当て」や、草根木皮などを使った原始的治療が行われていたと思われますが、奈良時代に入り562年に中国医学が仏教とともに伝来しました。ここから日本鍼灸が始まりました。江戸時代に入り後世派と古方派の二つの流れとなり、競い合うようにしてますます発展してゆきました。

 しかし明治維新となり時代が変わると、それに適した近代ドイツ医学が採用されるようになり東洋医学は衰退してしまいました。ツボや経絡が科学的に証明されていないために、また治療効果に個人差が大きい点、さらに言えば術者の治療技術にばらつきがあること等によって、時の政府に正式な医学教育に採用されませんでした。

 その後偉大な先人達の労苦と、大学研究者の科学的検証によって東洋医学の効果が再確認されるようになりました。第二次世界大戦が終結し世の中が平和になるにしたがって、自律神経疾患やアレルギー疾患など西洋医学では改善が難しい疾患が急速に増えてきました。それらの病気に対してツボ治療の効果とその副作用の少なさが、多くの患者さん受け入れられて再び脚光を浴びるようになったのです。私自身その恩恵を受けて身をもって東洋医学治療の素晴らしさを体験し、その普及発展に尽くそうと考えるようになりました。治療実績に裏打ちされた本当に良いものは、必ずや更に多くの方々に認められて日本中に世界中に広がってゆくものと確信しております。

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