33章 心の多チャンネル

 いよいよテレビはデジタル時代に入りました。アナログ放送であったものがデジタル化することで、チャンネル数を飛躍的に多くすることが出来るようになります。世の中が進歩するとより多くの人々のニーズに応えるために、ニュース、バラエティ、ドラマ、スポーツ、料理、教養、趣味、医学、健康、学習といった数多くの種類の番組が必要とされるようになりました。これを番組の「多様化」(diversity)といいます。

 今日本の人口は1億2千万人ですが、その一人一人が異なる個性を持っています。極端なことをいえばこれからの時代は1億2千万通りの多様性に応える必要があるということです。

 テレビが多チャンネル化したように、私達も時代に合わせて心の多チャンネル化を進める必要があります。それはモーレツ型の会社人間をみればよく分かります。彼らは「会社=命」で自分の時間も家族もすべてを犠牲にして、自分の人生を会社に捧げ働き続けてきました。

 しかしある頃から会社は非常なまでにリストラを進めて、容赦なく彼らを解雇したり左遷したりしました。そのためにうつに陥ったり無気力になった人が数多くいます。また首尾よく定年まで勤め上げたとしても、そこで家族に見放されて熟年離婚に至ったケースもかなりあります。

 そればかりではありません。かわいい我が子の幸せを願って、いい学校に入れて学歴をつけてあげたいと、受験戦争に駆り立てて勉強一筋に突っ走らせる親が沢山います。それがある日突然不登校になったり、外で悪い遊びを覚えたりして学校を中途でやめざるをえなくなる例も多々あります。

 これらは挫折した人の心のチャンネルが、「仕事」「会社」「試験」「学校」などほんの数種類しかないためにおきた悲劇です。チャンネル数が少ないと、心のキリカエがうまく出来なくて、チョットしたつまずきが絶望感にまで発展して「自分はもうダメだ!」となってしまうのです。

 ところが仕事や勉強以外にも、スポーツや絵画、音楽、登山、旅行、執筆など沢山の趣味のチャンネルを持ってそれを磨き上げてゆけば、いつか「芸が身を助ける」ことになります。それはかえって第二の輝かしい人生のスタートとなります。

 私の知っているある広告会社の優秀な社員であった男性は、現役時代から植木が趣味で休日毎に植木いじりを楽しんでいました。ところがある日退職勧奨にうってしまいました。これはちょうどいいチャンスとばかり退職金を沢山頂いて本物の植木屋に転進しました。今では造園会社も大きくなり人趣味を実益を兼ねる充実した毎日を送っています。

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