22章 自然治癒のブラックボックス
外からは覆い隠されて内部が見えないようになっている箱を、ブラックボックスといいます。自動車部品や高度精密機械部品の中で特別に製造されたものは、ブラックボックスに収められています。
現代医学では、治療のメカニズムを遺伝子のレベルで微細に研究しています。その進歩はめざましく、今まで治せなかった病気がどんどん治るようになってきました。さらに研究が進めば再性医療によって幹細胞からその臓器や器官を新しく作り直すことも夢ではなくなります。
その一方肩こりや神経痛などのベーシックな疾患や心のトラブルなどQOL(生活の質)を低下させるものに対しては、これはという決め手を欠いているのが現状です。東洋医学はこのような病気に対して、その有用性が認められます。このように西洋医学と東洋医学はそれぞれの得意分野が異なり、互いに相補いあって健康増進に寄与しています。
特に東洋医学治療では「治癒のブラックボックス」という考え方が重要と考えます。具体的にいうと神経痛を例に考えてみましょう。神経痛は器質的な障害は認められないのに、神経の激しい痛みに苦しめられます。これを東洋医学で治す場合、神経痛のツボにハリや灸刺激を行った後、その治療を集中させないことです。治療した後はそのことすら忘れてしまいましょう。こうして病気のことはブラックボックスにしまい、いつ治るかは自然にゆだねることにします。
もう治ったかしら、どの位良くなったかしらといちいち気にかけて患部を見つめていると、治りが遅くてイライラしてきます。なぜなら自然治癒はゆっくり行われるからです。それなのにまだダメだ、まだ良くならない、一体いつ治るのだろうと考えていると、却って自然治癒の妨げになります。それは交感神経系が緊張するために、血管が収縮して血行を悪くし治癒を遅らせることになるからです。
これはちょうど人を待つのに似ています。まだ来ないか、早く来ないか、と待っていると相手はなかなか現れてくれません。そんな時ほどケータイもつながらず連絡がとれないので、イライラはつのるばかりです。マーフィーの法則はにこのことを表しています。
ではどのように待てばよいでしょうか。相手がいつ来るかはブラックボックスに封印して一旦そのことを忘れてしまいます。近くのお店で気分転換、ウィンドウショッピングなどを楽しみましょう。本屋で新刊を探すのもよし、とにかく待たされたことが有意義であったと思えるようにしましょう。相手が遅く来てくれたお陰で却って良かった、という心持になれば上出来です。遅れてきた相手にこのような時間が持てたこと感謝できれば上々です。
この病気がいつ治るかはブラックボックスにしまっておいて下さい。仏教の維摩経(ゆいまきょう)には、病気にも意義があると教えています。このような病気になった経験のお陰で、弱い人の気持が分かり思いやりが持てるようになったと感謝できれば最高です。そのときいつの間にか病気は忽然と消えてしまうものです。
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