9章 自然治癒力を発揮する(1) 生命力は自分が認めただけ出てくる
東洋医学の根本をたどればそれは東洋哲学にもつながると考えられます。それは「人間には本来完全な生命力が内在しており、病気のない健康体こそが自然なすがたである。それが病気を現しているのは、どこかに自然に反するところ、不自然な部分があるからである。その不自然さを改めれば、自然に健康を回復することが出来る。」というものです。
「人間は病気になるのが当たり前であって、それを治すのが医学である。」というのが一般常識です。しかし自然治癒力を最高度に発揮するためには、そのような考え方を180度転換し、「人間には本来完全な生命力が備わっているから完全に健康である。病気にならないのが自然なすがたである。」と考え自分の力を信じることが大切です。
それでは何故そのような大きなことが言えるかというと、人体の実に精緻(せいち)で巧妙な働きを最新の医学で勉強すればすぐに分かります。それは100億年前のビッグバンによる宇宙が始まって以来、その膨大(ぼうだい)なエネルギーが星々をつくり地球をつくり人間をつくってきたからに他ならないからです。たった1個の単細胞生物が目に見えない大きな力によって無限の進化を続けて、ついには万物の霊長たる人間にまで進化を遂げたからです
例えば免疫力について考えてみましょう。空気中のビールスが鼻から進入したとしましょう。すぐにマクロファージという食菌細胞がやってきてそれを取り囲み食べてしまいます。しかし強いビールスだとその力だけでは足りません。そこでリンパ球という白血球が加わり抗体を産生してビールスを死滅させます。人体はB細胞、T細胞、NK細胞というようにさまざまな細胞を用意し、体の内外から身を守る防御システムを完備しています。だから何も意識しないでも病気を未然に防いでくれているのです。万一その警戒システムを突破しても、次の防御システムが働いて病気を撃退してくれる2重安全装置もついています。
では何故そのような完全な防御システムが完備しているのに、人は病気になるのでしょうか。最新の免疫学によれば、免疫には自律神経系が大きく関与していることが分かってきました。ストレスの受け方が強いと、脳の扁桃体(へんとうたい)の中にある不快を感じる脳細胞が興奮して、脳下垂体から神経ホルモンが出ます。それは血液で運ばれて副腎に作用し、コルチコイドというホルモンを多量に分泌させます。するとそのホルモンのためにリンパ球は活性を失い免疫力が低下して、防御網が破られてしまうのです。
自律神経系は人間のさまざまな感情が深くかかわっています。特にその中でも記憶を司る海馬(かいば)-扁桃体-視床下部(ししょうかぶ)-脳下垂体(のうかすいたい)のラインが最も重要です。過去にとてもいやな経験をして、そのことが潜在意識の奥深くに心の傷トラウマとなって記憶されたとしましょう。すると扁桃体にある不快細胞が興奮して視床下部の交感神経系を興奮させます。するとアドレナリンが分泌されて末梢血管を収縮させ、全身の血液循環を低下させます。さらに脳下垂体に働いて、前述の通りリンパ球の活動を抑えて免疫力を低下させることになります。
では自然治癒力を最高度に発揮するにはどうすればよいのでしょうか。それには交感神経系の過剰な働きを鎮め、副交感神経系をもっと活性化すればよいということが分かります。その最も基本となるものが「自分の完全な生命力を認める。自分の生命力を信じる。」ことなのです。
自分の完全な生命力を引き出すには、次のような言葉で病気が治ってゆく様を1日何回もイメージするとよいでしょう。
「自分の中には完全な生命力が宿っている。その力が自然治癒力として働いている。今いかなる症状が出ていても、やがては健康を現すのである。大丈夫!大丈夫!大丈夫!」
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